長野県小諸市 ファーム浅間 代表生産者 塚田 実 さん

長野県小諸市 ファーム浅間 代表生産者  塚田  実 さん

長野県小諸市は、北にある活火山、浅間山の噴煙と南の八ヶ岳の懐に抱かれ、千曲川が穏やかに流れる、美味しい野菜を作るための絶好な自然環境に恵まれています。天候特性としては冷涼で寒暖差があること、地形特性として標高差が大きいため、これらを組み合わせて様々な春から秋まで美味しい農作物が栽培されています。
そんな理想の場所にある「ファーム浅間」。初夏から秋までのレタスとサニーレタスは、モスと取り組みを始めてからもう14年になりました。特に感心させられるのが、栽培の基幹と心構えがブレないこと、そして何年経っても常に向上心を忘れないことです。

雄大な浅間山の麓に産地はあります

雄大な浅間山の麓に産地はあります

つくりべと

「つくりべとをしっかりさせねば!」聞いた時にどういう意味かわかりませんでした。“つくり”は方言で「耕作する」あるいは「農作物」のこと。“べと”は「土」とのことでした。最初にすべきは「畑の土をしっかりつくってやること」とメンバーの土屋さんはおっしゃいます。栽培の心構えがブレていないのはここからです。

収穫を待つレタス

収穫を待つレタス

メンバーの土屋賢司さん(左)、土屋和雄さん(右)です

メンバーの土屋賢司さん(左)、土屋和雄さん(右)です

「微生物」を畑に入れる

「どんなに理想的な堆肥を作って土の中に入れてもそのままだったら有効な微生物はいない。生きた土にするにはそこは人間がフォローして入れてやらないといけない。」とメンバーのみなさんが口を揃えておっしゃいます。ではどうすれば良いのか。「一緒に良い微生物を入れてやらないとね。でもそれだけじゃダメ。その他にもこれまで蓄積した工夫があるんです」と塚田代表にお話しを伺いました。

サニーレタスも順調に生育

サニーレタスも順調に生育

その目的は

20年くらい前、目指すべきものを「安全なもの、美味しくかつ大きいもの」と決め、その具体的技術や方法を探し、勉強に次ぐ勉強と実践を繰り返してきました。
中でも「大きいもの」というのが面白いです。普通レタスでは大きいものは硬く筋張っていて食感が悪く美味しくない。そこを難しい道をあえて選び、「大きくて美味しいもの」としたところがファーム浅間の一番の特色です。そのひとつの手段が微生物、そしてえさとなる堆肥、米ぬか、ミネラルをバランスよく一緒に土に入れることです。

安全で美味しくて、大きいものを目指しています

安全で美味しくて、大きいものを目指しています

堆肥へのこだわり

今年もこだわりの堆肥づくりがスタートとのことで、その現場へ案内していただきました。「牛糞に稲ワラを混ぜて水分調整し、ここでも微生物とそのえさを入れて丁寧に何度も切り返す。その微生物が堆肥を完熟させます。約2年をかけて、土の匂いのする理想の堆肥が出来上がるんです。」と塚田さんは言います。
そしてこの堆肥は畑で微生物の心地よい居場所になり、畑の土をより良いものに変えていきます。

堆肥を作っている現場を確認

堆肥を作っている現場を確認

土の上に出ている白い物が微生物です

土の上に出ている白い物が微生物です

微生物へのこだわり

栽培前の春、理想の堆肥とバランスをとる各種肥料、さらに微生物を畑に入れてレタスの苗を植える準備が始まります。その微生物は数年かけて自分たちで研究、確立させた内容。メンバーそれぞれの家にある発酵機で増殖させて作り上げます。ここまでこだわるのかと感心します。現在はこの他に外部からも良い微生物を入れて、これも併用しながらさらに研究を深めているとのことでした。

驚き!これが微生物発酵装置です

驚き!これが微生物発酵装置です

全て繋がっています

いろいろなことを伺いましたが、ここで素朴な疑問「こうするとどうして美味しくなるのか?」と再度お聞きしました。
「微生物や理想の堆肥を入れると、植物にとって畑の土が柔らかくなります。すると細かい細い根がびっしり張るようになる。するとさらに土に隙間が出来て土中に空気がよく入る・・・。そしてこの結果として美味しさに繋がる。」とのこと。「さらに生産者にとっては、畑に悪いことをする微生物が少なくなり、連作障害がなくなるという良いこともあるんですよ。」と塚田さん。
つまり、土作りをして、土が良くなると野菜が健康に育ち、その結果、農薬の使用が抑えられた味の良い野菜ができる。土作りは野菜作りの全てに繋がっているとのことです。実際に畑に入ってわざと硬そうな土の塊を選んで握ってみました。軽く力をかけると軽く粉々さらさら状態は驚きと納得です。

根の状態を確認します

根の状態を確認します

土を見ても根がしっかり伸びているのが分かります

土を見ても根がしっかり伸びているのが分かります

さらに美味しさを追求

レタスの美味しさについてもう少し聞いてみました。
「苦い、味がない、に加えてなかなか表現できないのが「歯切れ」。一口目、一噛み目に筋張っていないかどうかをよく感じてほしいです。包丁を入れてみると、その刃の入り方ですぐわかりますが、明らかに筋張っているものはエグ味がある場合も多い。そうなるのを防ぎ、美味しいレタスを出荷続けるために生きた土を維持しているんです。」なるほど塚田さんのレタスは歯切れの良く、実にシャキッとしたものでした。

こだわりのレタス是非お店で食べて見てください!

こだわりのレタス是非お店で食べて見てください!

天候に負けず頑張ります!

最後に、夏のレタスを悩ましている、最近の高温気候について伺いました。「最近の高温は少し異常で、冷涼地帯での作物であるレタスにとって厳しいのは確かです、しかし、この浅間の特徴的な地形である600mから1,000mの標高差を利用して栽培することを再確認し、きちんと実践すること、土づくりをもとにした栽培をブレずに続けることで乗り越えることがきっと出来るはずです」と力強い言葉が帰ってきました。
「ファーム浅間」のレタスは6月~9月の間、関西地区のモスバーガーに主に出荷されています。ブレない栽培法で作られたこだわりの塚田さんのレタス、是非お店で味わってみて下さい。

Text by tomio