産地だより 2018年3月

2018年3月
北海道勇払郡むかわ町
株式会社モス・サンファームむかわ(冬レタス)
代表生産者 奥野 博陽さん

今回の産地だよりは、2014年3月にモスバーガーと地元生産者と共同設立で、4番目に誕生した北海道のモスファーム「株式会社モス・サンファームむかわ」で冬季に栽培している“春レタス”栽培についてレポートします。

極寒の北海道の冬に、なぜレタスなのか

むかわ町は、北海道の航空路玄関口新千歳空港から車で南へ海岸線沿いに1時間ほど走ると到着します。太平洋に面しているため、冬の気候は「雪が少なく日照時間が長い」という特徴があります。しかし気温は低く、最高気温が“マイナス”という日が何日も続きます。

モス・サンファームむかわのビニールハウス

一年間の栽培内容は、夏季はトマト(収穫時期は7月下旬から11月上旬)、冬季は“春レタス”(収穫時期は4月から5月中旬)の2本立てです。春レタスの栽培時期である冬季はとにかく極寒であるため、その栽培はビニールハウス内で行われています。北海道は雪が降るため府県にあるような“連棟ハウス”は潰される危険性があることから一般的ではありません。しかし、むかわ地域は雪が少ないこと、また大きな栽培面積の確保と作業効率のことを考え、あえてこの連棟式のビニールハウス3棟にしています。

モス・サンファームむかわの“連棟ハウス”

モス・サンファームむかわの“連棟ハウス”

一般的な単棟ハウス

一般的な単棟ハウス

栽培方法について

栽培の総面積は1ha。レタスの栽植本数は約98,000本です。前年のトマト栽培終了後に清掃、耕土、肥料散布、整地し、12月中旬から分散して2月まで定植作業を行います。

レタス栽培準備のために肥料散布

レタス栽培準備のために肥料散布

苗の定植作業

苗の定植作業

苗の定植作業全体状況

苗の定植作業全体状況

特に12月中旬から外気温は氷点下、1月からはマイナス20℃以下になることも頻繁にあります。ビニールハウスの中とはいっても想像以上にとても寒く、定植作業の際に時折土が凍っていることもあります。そのハウスの中に低温対策としてさらにトンネル栽培(本州の露地栽培で多く見られる、畝をビニールなどでトンネル状に覆って作物を栽培する方法)をしています。
そんな環境でもレタスの生命力は強く、レタスはしっかり育っていきます。

苗の定植後に温度確保のためビニールを張る

苗の定植後に温度確保のためビニールを張る

低温時の温度確保トンネル栽培

低温時の温度確保トンネル栽培

細心な栽培管理作業

レタス栽培上で最も注意していることについて奥野さんに尋ねました。「まず第一に、雪が少ないとはいっても頻繁に降ります。降るとどうなるか。ビニールハウスの上に雪が載ったままだと光が入りません。レタスは光がないと育ちません。また、ビニールハウス内の温度も上がりません。またビニールハウス自体の倒壊防止も考えなくてはなりません。ビニールハウス内を暖房するのは、作物の生育を促進するためだけではありません。光の確保とビニールハウスを守るためです」

雪を融かすための温風ダクト

雪を融かすための温風ダクト

天候を見ながらの環境調整

スタッフの方が頻繁にビニールハウスに出たり入ったり、また違う棟へ行ったりと、とても忙しそうに動き回っていました。今日は朝から真っ青な空が広がっています。札幌の雪まつりが終わるころから日射の強さが増していることを肌で感じることができます。日差しが強いとビニールハウス内、その中のトンネル栽培の内部は急激に温度が上昇します。温度が上がりすぎるとレタスにとっては強いストレスになり、いくら寒い中とはいっても正常な生育となりません。そのために空を見ながら、ビニールハウスの中に入り温度確認。温度計も確認しますが、この後どういう環境になるかを予測と同時にレタスの状態を見て感じとり、トンネルのビニールの袖をあける幅を細かく調節しています。この観察と調整は日が落ちるまで続きます。赤ちゃんが寝ているときに布団を被せたり、布団の種類を交換したり…とまるっきり一緒の気持ちと動きです。

温度調節のためビニール袖の調節作業

温度調節のためビニール袖の調節作業

2017年12月下旬に定植した2ヵ月後のレタス状況(1)

2017年12月下旬に定植した2ヵ月後のレタス状況(1)

レタスの味のよさ

気温が低いということは、夏のレタス栽培と比べても確実に“地温も低い”ことは否めません。栽培の基本の一つに「地温を確保しましょう」とありますが、この時期と環境では十分な温度確保はできません。根の動き、伸びも極めて遅いことは明らかです。栄養吸収もゆっくりと…。この栽培にとって厳しい環境の中でおいしいレタスにするために、栽培前の土づくり段階での肥料のバランスに特に注意し、地温が低い中でも根を動かす特殊な資材を使用するなどの工夫が随所にあります。それに低い温度でじっくり生育させることにより、よりおいしい、より甘いレタスの品質につながることが、今回栽培現場を確認させていただき大変よく理解できました。

2017年12月下旬に定植した2ヵ月後のレタス状況(2)

2017年12月下旬に定植した2ヵ月後のレタス状況(2)

最後に

奥野さんから一言いただきました。
「じっくり時間をかけて大切に育てたレタスは、味は抜群、歯触りも最高です。数量が少なく出荷時期も限られているためモスバーガーのお店で出会う機会は少ないのですが、見かけましたらどうかむかわのことも思い出していただければ嬉しいです」
北海道の極寒期栽培レタスは4月ごろ、短い期間ですが北海道の店舗に納品される予定です。モスバーガーのお店の野菜掲示板で“むかわ町”を探して、ぜひご賞味ください。

2017年3月下旬 初収穫(1)

2017年3月下旬 初収穫(1)

2017年3月下旬 初収穫(2)

2017年3月下旬 初収穫(2)

Text by Tomio